生前整理の重要性⑤

遺言・相続のこと ~公正証書遺言の作成~

遺言者Aさんにはお子さんはいません。奥様は重度の病気で数年前から入院、最近はもの忘れも激しく  なり、Aさんの事さえ分からないとのことです。
Aさんは歩行が困難になり、通常であれば施設に入所するといいのですが、可能な限り一人で生活したいと考えています。
 自らの通院や、奥様の世話などは子供の頃から我が子のように接してきたAさんの甥ごBさんが担当、Aさんは自分にもしもの事があったら、妻の事も含めこの甥に任せようと考えています。

 そこで、今後奥様が必要な一定の財産は奥様に、残りのすべての財産は甥に相続させる遺言書を書きました。財産は、預貯金、不動産、株等です。

遺言をせずに、このままAさんが亡くなると、法定相続。4分の3を奥様、残り財産の4分の1を  Bさんを含めた兄弟姉妹(甥姪)が取得することになります。
もちろん「遺産分割協議」でこれと異なった分け方をすることも可能です。
しかし、奥様が重度の病気のため協議そのものが出来ないわけです。
この場合奥様に後見人を立てることになります。
手間と時間、そして費用がかかることになるわけです。
その後、この奥様が亡くなると奥様が取得した財産は奥様の兄弟姉妹の方へ流れて行きます。
Bさんがずっと面倒をみてくれているのにもかかわらずです。
そこで遺言書を、それも公正証書で作成することにしたわけです。
作成から僅か一月、Aさんは突然この世を去りました、、、。
とても残念な出来事でしたが、これも何かの運命だったのかも知れません。

Aさんが亡くなったことは本当に残念なことですが、Aさんが遺言書を残した ことで残された方々にとっては本当に救われる結果となりました。
まさに「遺言書は家族への最後の愛情表現」といわれる所以です。

公証役場で「遺言公正証書」を作成している人は、ここ10年で1.5倍と増加傾向にあります。
また、自筆証書遺言は裁判所の検認手続きが必要なので、このデータを合わせると約10人に 一人が遺言書を書いているようです。
イギリスでは遺言書の作成率は75歳以上で80%超、アメリカでは50%程度と言われています。
欧米に比べて日本が少ないのは、契約書を交わしたり、法に訴えて物事を扱うのは苦手という 国民性にあるといわれています。

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